【大阪労働局長】令和6年度全国労働衛生週間を迎えて

志村 幸久 大阪労働局長

 

 建設業労働災害防止協会大阪府支部会員各位におかれましては、日頃から労働災害の防止活動、労働衛生・産業保健活動の向上に向けた取組にご尽力賜り、厚くお礼を申し上げます。

 今年で第75回を迎える全国労働衛生週間は、昭和25年の第1回実施以来、国民の労働衛生に関する意識を高揚させ、事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保に大きな役割を果たしてきました。

 労働者の健康をめぐる状況については、高齢化の進行により、一般健康診断の有所見率が上昇を続けているほか、何らかの疾病を抱えながら働いている労働者が増加するとともに、女性の就業率が上昇し、働く女性の健康問題への対応も課題となっています。また、業務上疾病は引き続き高い発生件数で推移しており、熱中症や腰痛など、気候変動、高齢化等の要因による業務上疾病の発生が増加している傾向にあります。こうした労働環境を取り巻く変化に対応し、あらゆる労働者が健康に働き続けるためには、職場における健康管理はもとより、女性の健康への対応、治療と仕事の両立支援、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりの推進が重要となります。

 また、過労死等事案の労災認定件数は、令和5年度には全国で1,099件となっており、引き続き過労死等を防止するためには、働き方改革の推進と相まって、長時間労働による健康障害の防止対策の推進が必要です。特に精神障害による労災認定件数は令和5年度には883件と過去最多となっており、メンタルヘルス対策をさらに強化していく必要があります。

 化学物質による労働災害については、特定化学物質障害予防規則等の特別規則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが全体の8割を占め、化学物質等による重大な遅発性の職業性疾病も後を絶たない状況です。このため、従来、特別規則の対象となっていない全ての危険・有害な物質への対策を強化するため、国が行う化学品の危険性・有害性の分類(GHS分類)で危険性・有害性が区分されている物質全てについて、事業者が自ら行ったリスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入し、その仕組みを実効あるものとするため、ばく露の上限となる濃度基準値の設定、危険性・有害性に関する情報伝達の仕組みの整備・拡充を行うための法令改正が予定されているところです。

 また、職業がんの労災補償の新規支給決定者は、石綿による中皮腫・肺がんを中心に全国で年間約1,000人にも及んでおり、今後も、過去に石綿含有建材を用いて建設された建築物の解体工事等の増加が見込まれることから、一定の建築物や工作物などの解体・改修工事については、資格者による事前調査や、石綿事前調査結果報告システムを用いた報告の義務化など、石綿によるばく露防止対策の強化を進めています。

 このような状況を踏まえ、第14次労働災害防止計画において、令和5年度より「自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発」や「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進」、「労働者の健康確保対策の推進」、「化学物質等による健康障害防止対策の推進」等合計8つの重点を定め、労働災害防止対策を進めています。

 こうした背景を踏まえ、今年度は、

「推してます みんな笑顔の 健康職場」

をスローガンとして全国労働衛生週間(10月1日~7日)を展開いたします。

 各事業場におかれましては、本週間を契機として、事業場内の労働衛生意識の高揚を図るとともに、自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図っていただきますようお願い申し上げます。